いつまでも手を繋いで歩いていければいいのに。




「……今日も来てくれないのかな」
 呟いて花摘は琴を弾く手を止めた。
 窓の外はもうすっかり夕刻の紅に染まり、風の中には虫たちのささやかな声も聴こえる。
 綺麗な夕焼け。
 でもきっと、明日は雨。



「すごい雨だねぇ」
「ああ」
「夕立かな?」
「ああ」
「もう夏も終わりだね」
「ああ」
「…ねぇ、ちゃんと話聞いてる?」
「………」
「ねぇってば!」
「…虹、出るといいな」
「――そうだね」




 夜。花摘は眠らずに窓を打つ雨の音を聞いていた。
 窓を伝う幾筋もの跡。
 そっと手を伸ばすと、ガラス特有のひんやりとした感覚が指先の熱を溶かすように拡がった。
 冷たいけど心地いい。
 それはどこか、あの人の手の感触に似ている気がした。




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 言い訳。
 久しぶりに十月の花の花摘ちゃんと衛くんでした
 そろそろ昔のストックが切れちゃう……!!


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