「約束」 彼女が東京に行く。 僕がそのことをきいたのは、彼女が東京に発つ前夜のことだった。 「……ごめんなさい。ひとりで、勝手に決めて」 何かあるとは、薄々勘付いていた。 そして、それをなかなか言い出せずにいた彼女の気持ちもわかっているつもりだった。 「最低でも4年は、向こうにいなきゃいけない。もしかしたら、もっとずっと帰って来られないかもしれない」 自分に一言の相談もなく彼女が全てを決めてしまったことがくやしかったのか、それともこの程度のことで酷く揺れてしまっている自分が悔しかったのかはわからない。ただ、彼女の視線から逃れたくて、僕は手に持った煙草を火を点けるでもなく弄んでいた。 もちろん別れるつもりなんてない。 少なくとも僕には。 「…煙草ばっかり吸ってると、いつか死んじゃうから」
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