「カタコイ」


 夕方。教室。ふたり。


「…タバコ」
「え?」
「平気?」

 制服のポケットからタバコを取り出して悠が言った。

「…別に平気だけど、ここ学校だよ?」
「先生たちもう帰っちゃったし、バレなきゃ大丈夫だよ」
「私が告げ口するとか、思わないわけ?」
「……季佳は、そんなことしないよ」
「なんでそんなこと言い切れるのよ」
「さぁね」
「さぁって……」


 わけがわからない。
 悠はいつもそうだ。わけのわからないことばかり言って私を混乱させる。



「でも、しないでしょ?」


 机に悠の影が落ちる。漂う紫煙。

 近づく距離。柔らかな感触。



「しないよね?」



 苦い苦い笑顔の脅迫。

 


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 高校時代のお話でした。相変わらずわけがわからないデスネ。
 これ読んでる身内にどんどん悠がへたれになってると言われたので、彼がまだ
がんばってた頃をちょいちょいと。

 これと同じくらいの時間軸に雪ネタがあるんですけど、この季節に雪ネタってどうなの……?
 




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