白い凶器


     貴方は忘れてしまいたかったのでしょう?
 私のことも、ふたりのことも、何もかもを棄ててしまいたかったのでしょう?

 
 
 なんて愚かな 私の最愛の人



 だから貴方は私の元から逃げ出した。
 何重にも囲った檻から逃げ出した。
 手足に枷をつけたまま。首に真っ紅なリボンをつけたまま。



 おかえりなさい 私の最愛の人


 

 ベットに横たわる血塗れの貴方。
 安心して。
 もう二度と、繋いだ手を離したりはしないから。
 もう二度と、貴方をひとりにしたりはしないから。
 

 だから そのまま、ずっと――……



 (貴方を見下ろす私の瞳はちゃんと悲しげに映ったかしら)


 







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