人を愛すいつかの日のために
美しいお姫サマのもとには、毎日たくさんの求婚者がやってきます。
求婚者たちは、手に手に薔薇や宝石や様々な美しい贈り物を持って塔にやってきます。
"お姫様、お姫様、今日こそは姿をお見せください"
"お姫様、わたくしは貴女にお聞かせするために、異国の歌を覚えてまいりました"
"お姫様、わたくしは、貴女が欲しいと仰っていた硝子の遊戯盤を持ってまいりました"
"お姫様―――"
求婚者たちは、固く閉ざされた扉の前で何度も何度叫びます。
ですが、いつまで経っても、お姫サマも召使も外に出てくる様子はありません。
お姫サマは塔の一番上にあるお部屋から、求婚者たちを見下ろしていました。傍らには三人の召使がいます。
…私、遊戯盤なんて欲しいと言ったかしら?
お姫サマが言いました。
召使は答えません。
代わりに、お姫サマの膝の上で黒猫がニャーと一声鳴きました。
そうよね? 私、そんなこと言っていないわよね?
お姫サマに撫でられて、猫はゴロゴロとのどを鳴らします。
ああ 私の王子サマ。早く迎えにきてくれないかしら……
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